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撮影の為に訪れた建物だったから、事務所のような土地勘が無い。なので、しらみ潰しに進んでいくしかない。
前回と同じように大人たちからは隠れながら
建物内を散策していく。
⋯⋯色々と疑問が浮かぶけど今は考えたらダメだ。
あの舘さんとこの阿部ちゃん、
そして"全員"と言っていた言葉の意味。
あの翔太が言いかけた言葉とか。
それにあの時の声⋯⋯⋯あれは絶対に、
「考え事？」
囁くような声に体が硬直する。
目の前に立ち塞がるように立っていたのは舘さんだった。
さすがの瞬発力で掴まれた腕は
引くこともできなさそうだ。
「さっきは驚いたよ。どういう仕組みだか知らないけど急に消えたんだもの」
続けられた言葉に『え？』と声が出る。
さっきって、、あの時の？
「ふふ、その顔は驚いてるね？翔太が1番手で印象悪かったから俺は逆を攻めようと思ったんだけど」
『翔太、』
「みんないるよ。翔太も阿部も、ふっかも。
でも⋯⋯あの子はいない」
その言葉に浮かんだのはマリアの顔。
マリアは、いない？
「当たり前じゃない。どんな物語だってお姫様は一人でいいからね。Aもそう思わない？」
『思わない。私が知ってる舘さんはそんな事言わない。
離して。出口はもう、分かってるよ』
「帰りたいって思うの？
あんな、Aを大切しない彼らの元に」
腕を掴む力が更に強まった。
見上げる舘さんの顔は歪んでいた。
大切にしない、なんて。
分かってないな。本当に、分かってないよ。
『⋯⋯それでも帰る。
私はSnowManが大好きだもん』
どこからか声が聞こえる。
私の名前を呼ぶ、佐久間の声が。
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作者名：シナモ
| 作成日時：2024年3月23日 18時
