××エンド、××ルート (ページ5)

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ルート解放「ようこそ、黒雪姫」ページ5

『れ⋯⋯？』

嗅ぎなれた、けれど懐かしいような匂い。

抱きしめられている。

レッスン場の鏡には間抜けな顔をした私と
私を抱きしめる男の後ろ姿が映っている。

その後ろ姿に強い既視感を覚えると共に、更に強く抱きすくめられて驚いてしまう。

「やっと⋯⋯やっとだ。
こうやって触れる日をずっと待ってた。」

間違いない。この匂いも声も姿も、

翔太のものだ。

顔は見えない。でも間違いない。

10年以上一緒にいるのだ。
後ろ姿だって間違えない自信があった。

⋯⋯⋯⋯でも。

『違う、』

匂いも声も姿も翔太なのに、

どれをとっても翔太じゃない。

第一に翔太は私を抱きしめたりなんてしない。

絶対に。

「違うって？やだな、俺は渡辺翔太だよ。
ほらちゃんと俺を見て」

そこでやっと顔を見た。

見た事がないような表情で微笑む翔太。

「な？」

猫撫で声に、悪寒が背筋を這う。

掴まれた腕を振り払った。

瞬間、翔太の表情が崩れた。

『違うって！』

私は逃げ出した。

レッスン場を飛び出して、

向かわなければならない場所がある。